北欧の福祉
スウェーデンの高齢者ケア
2011年1月24日更新
高齢者ケアの基本3原則
- 継続性の尊重
- 自己決定権の尊重
- 残存能力の活用
社会サービス法第6条
援護を受ける権利
「個人はその求めるものが他の方法をもってしても充たされない場合は、自己の生活維持及び生活上の諸問題に関して、社会委員会の援護を受ける権利を有する。個人は前項の援護によって、適正な生活水準を保障されなければならない。前項の援護は、当該個人の資力を強化して自立的な生活を営むように形成されなければならない。」
スウェーデンの病院
全国に7か所の大学医学部があり、それぞれ管区病院がある。この下に人口30万人につき1ヵ所のランスティング(県立)総合病院があり、さらにその下に各コミューンに県立病院管轄の小病院、さらに各地区に地域診療所があり、診療と訪問看護、妊婦指導を行っている。その他、精神病専門病院もあったが、95年1月1日からの精神障害者法の改定により解体され、精神障害者専門の外来診療所に変わっている。
地域診療所/Vardcentralen
県が管轄する医療地域住民の医療サービスを提供する施設で、都市部では人口50,000人に1ヵ所設置され、2,000~3,000人に1人の医師がいる。診療所の大きさによって人員配置は異なるが、医師、看護師、准看護師、訪問看護師、作業療法士、理学療法士によって構成されている。女性が妊娠すると地域診療所で診察を受け、妊娠中の指導を受け、病院で出産し、地域診療所で乳幼児検査を受けていく。障害児は早期発見、早期治療が重要で、看護師はそのための教育を受けている。受診の住民は、痛み、感染症、神経症、糖尿病、高血圧、肥満の人が多い。
民間医師診療所
すべての地域に地域診療所があるのではなく、数人の医師たちがグループで診療所を作り、共同で診療しているところもある。住民は、地域診療所か民間医師診療所か希望する診療施設を事前に登録する必要がある。
在宅訪問医療
シュークヘムまたは地区診療所に所属する在宅医療巡回訪問グループが、あらかじめ登録されている患者の自宅(シュークヘムや老人ホームを含む)を訪問して療養指導、治療を行う。訪問看護師は人口5,000人に2人の割合で配置されている。グループは通常は訪問看護師、准看護師、及び理学療法士で構成され、必要な場合に医師及び作業療法士が同行する。なお、スウェーデンでは、94年1月から家庭医制度が導入されたが、不要と思う人は家庭医を選択しなくてもいい。
在宅ケア
高齢者や障害者に、本人が望む限り自宅(サービスハウスを含む)での生活を続けさせるために、様々な援助を与えるサービス。たとえば、朝に目覚めさせ、ベッドから起こし、排泄、洗浄、着替え、朝食の準備と食事の補助、ティータイムの用意までの手助け、昼食の介助、買い物の同行や代行、週に数時間の部屋掃除、夕食の準備といった援助を必要度に応じて提供する。1日に8回まで訪問しても自立できない人は、特別な住居へ移ることが検討される。在宅ケアのためのホームヘルプサービスは有料で、料金はコミューンによって異なる。
夜間パトロール
県が管轄する医療パトロール(2人1組)と、コミューンが管轄する介護パトロール(2人1組)の2種があり、別々に分かれてパトロールするコミューンがある。医療サービスは治療、投薬、注射など。介護サービスは就寝介助、おむつ交換、認知症性老人の所在確認、カテーテル交換など。09年から、県とコミューンの合同パトロールで、医療と介護の連携を図る試みも行われている。
デイケアセンター
老人ホームやサービスハウスの中、または独立してデイケアセンターがある。ここでは在宅の人(サービスハウスの中に住む人も在宅と考える)が、食事、リハビリ、ホビー、読書、フットケアなどのサービスを受けることができる。認知症老人専門のデイケアセンターもある。最近はサービスハウスが安心住宅に改築されているので、デイセンターが出される傾向がある。
高齢者障害者補助器具センター
各地の病院などに各種の補助器具を集めた展示場があり、希望者はアポイントを取って訪問する。理学療法士などがその人にあう器具を選び、さらにピッタリあうように改修してくれる。器具は申請すれば、無料で支給される。
介護判定員
コミューンの高齢者障害者課の中に4人程度の判定員(査定員。公募、面接を経て指名される)がおり、高齢者障害者にどの程度の介護を提供するか査定する。また、施設に居住する人、ヘルパー介護を受けている人から苦情を聞いたり、民間委託になった施設の住人からアンケートをとったり、施設の介護の質を査定したりもし、民間委託しても質を維持するようにしている。
エーデル・リフォルメ/Adelreformen
92年1月1日より、福祉と医療の連携を深めるため、これまで県の管轄だった老人医療も、福祉と同様にコミューンが管轄することにした医療福祉改革。この改革によりこれまで県の管轄だった長期療養病院が、コミューン管轄のナーシングホームへと移管された。老人介護を医療から福祉の管轄へ移すことにより費用の削減を可能にする一方、県からより小さな単位であるコミューンへ管轄を移すことにより、キメ細かな介護を可能にしようとするもの。94年1月1日からは障害者法の改革が行われ、介護者選択の自由が与えられた。95年1月からは精神病院が解体され、精神障害者もコミューンの管轄になった。
高齢者住宅と特別な住居
スウェーデンでは、すべての住宅は住宅建築法の規定の中で建てられている。どの住宅も最低限として1部屋+台所+バスルーム(トイレとシャワー付)を備えていなければならない。高齢者住宅とは、最近急速に増えている55歳以上の人だけが入居できるシニア55とか、安心住宅と呼ばれるバリアフリー設計になっている住宅。特別な住居とは、シュークヘム、認知症グループホーム、老人ホーム、サービスハウスを指す。認知症専用の住居に限っては、台所はついていなくてもいい。
シニア住宅+55
2000年以降、バリアフリー住宅で18歳以下の子どもがいない55歳以上の人だけが入居できる集合住宅ができている。居住権を購入して入居する形と賃貸がある。住民たちがブリッジ大会、学習会、食事会を開いたりして、孤立化を防ぐ対策を考えている。必要になれば介護は地域の自治体が提供してくれる。日本とは違ってほぼ全面的にサービスが提供され、年金では足りない場合には家賃補助もあるので、このシニア住宅を終の棲家にできる。
安心住宅/Tryghetsboende
70歳以上の元気高齢者が申し込むことができ、75歳から入居できる住宅。ふつうの住宅なので、入居に査定はなく、家賃を払って住む。管理人がいて、トラブルには対応してくれる。ここでも趣味活動があり、庭の管理やボランティア活動など、孤立しないようにさまざまな計画が練られている。介護・看護が必要になったら、地域の訪問介護・看護が依頼できる。安心住宅の概念は2008年頃にできたが、実際にはそれほど普及していない。いまはサービスハウスを改築して安心住宅に変えているところが多い。
サービスハウス/Servicehus
自立できる高齢者と障害者を対象としたアパートで、居室はトイレ・シャワー・キッチン付きの賃貸または権利を買う方式。1人用アパートが多く、希望者には2人用がある。建物の中には、食事を提供するカフェテリア(元気な人は自室から自分で食べにくるし、来ることができない人はヘルパーが定食パックを買って持っていき、部屋で食べるとか、好みに応じてできる。自分の好きな時間に好きな形で食事できるので、施設ではなく、自宅にすんでいると考られる)、機能訓練もできるリハビリ施設(高齢者体操の時間もある)、フットケア(足のタコ取りや外反母趾、爪の食い込みなどのケア)、ヘルパーによる介護、洗濯サービス、美容院、織物や木工・絵画・ビリヤードなどのアクティビティができるホビールームなどがある。国は80歳以上の超高齢者の増加に対応するため、重介護、認知症老人介護を優先的に考えサービスハウス建設への補助金を打ち切ったので、1988年からほとんど建てられなくなっている。すでに国はサービスハウスの廃止を打ち出し、既存のサービスハウスも、一部をナーシングホームや認知症老人グループホームへと改築しているところが増えている。 また、2010年に入り、ストックホルム市は10か所のサービスハウスを安心住宅にする改築を開始した。安心住宅は施設ではなく住宅なので、看護師や介護士による介護、ホビールーム、リハビリ室、カフェテリアが外へ出されるが、一部ではカフェテリアは残す動きもある。
シュークヘム/Sjukhem
かつて長期慢性疾患患者を治療する病院だったところで、92年から福祉の一部としてコミューン(自治体)の管轄下に入り、疾患や障害をもつ人々が入居し、その人々を治療する医師はいないが、医療機関を近くに建てるか、または医師の巡回が定期的に行われている。施設長や階長が看護師で、職員も看護師と准看護師主体に雇用されている。居室は1人か、夫婦か姉妹の2人部屋で、35平方メートル前後はあり、簡易キッチンやスタッフ2人が入れる広さのトイレ/シャワー室がついているところがほとんど。医療的でありながら終の棲み家であるので、ターミナルケアの技術や設備もある。ただ、スウェーデンでは自分で食べることができなくなったら、点滴や胃ろうで生き続けることを望まない傾向が強い。英語ではナーシングホームと訳されることが多い。
老人ホーム/Aldreboende
身体に機能障害がある高齢者、加齢のために在宅生活ができない高齢者などが居住している住宅。かつては共同アパートがふつうだったが、改革が進み、現在では90%以上が1人用アパートになり、トイレ・シャワーも設置されるようになり、サービスハウスと変わらない設備になっている。8人前後のユニットに分けての介護になり、いつも介護者がいて、掃除、話し相手、シャワー介助、おむつ交換などの介護がある。同じ介護者が同じ利用者を介護するコンタクトパーソン制をとっているところが多い。介護規模の大きい所には外部の人も利用できる食堂、ホビールーム、フットケア、美容室などもある。90年代に入って、サービスハウスに代る施設として建設されている。
認知症対応グループホーム/Groupboend
障害者の居住生活施設としてスタートし、それを認知症の居住生活の場に応用したもの。似た性格の認知症の人たちで5~8人程度のグループを組み、住民と同数程度のヘルパーが家族的な介護をしている。1985年にモータラのバルツァゴーデンから始まり、92年7月から国として設置を推進している。当初は郊外の一戸建てが主流だったが、介護のマンパワーや情報収集の効率を図るため、シュークヘムやサービスハウスの中に作る例が増えている。前頭葉に異常があり、攻撃的な老人専用のグループホームもできている。
このグループホームでのケアは、居住者の心を安心させるように配慮され、食事やクッキーを焼く匂いを絶やさない、調理に老人たちも参加してもらう、老人たちが子どもだった時代の家具や写真、絵、玩具、人形を飾るなどの配慮をしている。







