北欧
フィンランドの高齢者介護政策
基本的な情報

フィンランドの面積は日本の9割ほどの338,000平方キロメートルで、うち9.4%は湖沼地帯。人口は520万で、そのほとんどが国土の南半分に住み、ヘルシンキ周辺には100万人が住む。520万人のうち65歳以上は16%だが、2010年には約20%、2030年には約25%になると予想されている。その後は高齢化率が低下するとの説が主流。
平均寿命は延び続ける一方、65歳以上の5.6%、75歳以上の20%、85歳以上の35.42%が要介護者になっている。
75歳以上の高齢者の87%は自宅に住み、6%がサービスハウス、7%が老人ホームや病院で暮らしている。この15年間に老人ホームや病院で暮らす人の割合は減少しており、自宅にとどまるか、サービスハウスに移行している。85歳以上の高齢者でも、75%が自宅で暮らしている。
国は可能な限り自宅で暮らせるように、居宅介護の充実に努めている。とはいえ、1980年に31.5%の高齢者が受けていたホームヘルプ・サービスは、 2003年には18.7%に減少したという数字もある。この理由としては、介護予防に努めたので高齢者が健康になった、住宅環境が改善された、自治体の経済が悪化したためにサービスを減らした、などが上げられている。今後は75歳以上の25%をカバーできる居宅介護、居宅看護をめざしている。
この国の地方自治体の数は440と多く、人口数千から1万程度の小さい規模になっている。当然サービス内容には自治体ごとにばらつきが生まれている。自治体は自らサービスする、他の自治体と共同でサービスする、他の自治体と協力体制を作ってサービスする、民間からサービスを購入する、サービスクーポンを配布するなど、いろいろと工夫している。サービスの財源は、国からの補助金が32%(高齢者の数や失業率によってバラつきがある)、自己負担が9%で残りが自治体の負担になる。
高齢者住宅

第二次大戦終了から60年代までは、多くの高層住宅(3階から6階程度)が建てられた。そのほとんどはエレベーターがなく(05年の法律改正で3階以上は設置が義務化された。古い住宅の改修には国が50%の補助金を出すが、年間2%しか設置していかない。全部に設置されるにはかなりの年数がかかる)、バリアーが多いふつうの住宅だった。高齢者はそういう家に住むか、老人ホームに住むかの2者択一しかなかった。フィンランドの住宅政策は、国が関与せずに民間にまかせていたので、こういう結果になった。この点は、国が住宅の面積、設備、改修のしやすさなどに関与してきたスウェーデンやデンマークと大きく違っている。
60年代に入って、これまでとは違って、給湯、シャワー、セントラルヒーティング付きの賃貸住宅が作られ、多くの老人たちが移っていった。都会ではアパート形式、郊外ではテラスハウスだった。
70年代に入り、経済が好調に転ずると、住環境の見直しが行なわれた。70年代後半からはスウェーデンで建てられていたサービスハウスが導入された。食事、介助、掃除、洗濯、デイサービス、共同スペース、24時間の緊急対応サービスがついたアパートが人気を得、現在まで建設が続いている。基本的には賃貸アパートになっている。建設費は半分が自治体で、半分が事業主体の民間財団などが出す例が多い。
80年代からは、スウェーデンの影響を受けてグループホームが建てられはじめた。最初は知的障害者のためのものが広がり、やがて認知症高齢者のためのものが増えた。10年前からは、精神病院解体にともない精神障害者のためのグループホームも増えている。平均では、共用部分を含めた1人当たりの面積は 40-45平方メートル、個人部分の面積は20-25平方メートルで、居室兼寝室に、シャワーとトイレ付きのバスルームがある。こういう個室が8戸程度で一つのユニットを作っている。ただ、認知症高齢者のためのグループホームでは、1ユニットだけの単独のものは少なく、数ユニットか、サービスハウスに隣接する形が多い。
2000年からは、バリアフリー仕様の普通の家がシニアハウスとして人気が出ている。特にサービスはないが、近くに介護サービスの拠点や病院があり、緊急の事態には対応できるようになっている。サービスハウスよりは広い面積が確保できるのが魅力のようだ。入居できる年齢は55歳以上となっている。価格はいろいろだが、例として04年に53平方メートルで21万ユーロというものがある。
スロットマシーン協会

フィンランドにはいたるところにスロットマシーンがある。スーパーマーケットの一郭、酒場の片隅、レストランの片隅、駅、空港、バスターミナルなど、人が集まるところにはどこにもスロットマシーンが設置されている。これらの器械を製造、管理しているのがスロットマシーン協会RAYという組織。医療や福祉を援助するという目的で1938年に設立され、国の管轄下で賭博器械に関する事業を独占的に扱っている。ヘルシンキ中央駅広場の東側にあるグランド・カジノもこの協会の経営。ギャンブル依存症を生むなどの弊害もあるが、日本財団のように個人の資産を増やすことが本来の目的であるが隠れ蓑として福祉補助をするのとは違うので、人々は素直にギャンブルで遊ぶことができるようだ。
04年の収入は、5億8千200万ユーロ(約814億円)で、その67.1%にあたる約546億円が医療・福祉関係の援助に支払われた。うち17.1%がサービスハウスの建設支援だった。サービスハウスは賃貸なので、居室については30%、共同部分と事務部分は70%補助としている。支援対象はNPOや財団などで、自治体や企業、個人、宗教団体などは対象外。援助申込は4000か所からあり、昨年は1145か所に配分した。審査はRAYの内部委員会が検討し、厚生省の委員会、政府閣議を経て決定する。
05年からは、サービスハウス建設などのハード面の比重を下げて、介護予防や体調管理、リハビリ支援などの活動に援助するように政策が変更された。このため、高齢者福祉分野へのNPOや財団の参入が増えている。これは、政府の政策変更にともなうもの。






