オセアニア
オーストラリアの高齢者介護制度
オーストラリアの人口と高齢化率
オーストラリア連邦の総人口は2009年10月現在で約2201万。州別では、ニューサウスウェールズNSWが707万、首都キャンベラACT35万、ヴィクトリア州540万、クイーンランド州438万、サウスオーストラリア州161万、ウエストオーストラリア州222万、ノーザンテリトリー準州22万、タスマニア州5万となっている。
2005年の高齢化率は13.3%と米国と同程度であり、日本の20.1%と比較するとまだ低い。これは第二次大戦後に移民してきた人が多いためである。
オーストラリアの健康保険制度
健康保険は、国民健康保険と民間健康保険の2種類に分かれている。
国民健康保険 MEDICARE
ふつうの収入がある人は収入額の1.5%、民間保険に加入していない人は収入額の2.5%を保険料として、所得税と一緒に納入する。
開業医や公立病院での外来患者治療費は85%が国民健康保険でカバーされ、15%が自己負担になっている。但し$52.50までという上限がある。低所得者にはバルク・ビリング・システムがあり、自己負担分が免除される。入院患者の治療費は全額カバーされる。
診療のあとで処方箋に従って購入する薬品費は、一部を除いて全額自己負担になる。
私立病院では一定の枠内であれば、治療費の85%が保険でカバーされる。
民間健康保険
大手保険会社はMBF、HCF、MEDICARE PRIVATE の3社がある。国民の30%が加入しているが、政府の加入奨励にもかかわらず、減少傾向にある。歯の治療代、私立病院の入院費用、分娩費用、義足、めがね、救急車、薬品費、フットケアなどが対象になっている。
オーストラリアの医療制度
医療機関には一般開業医、専門医、病院、検査機関、薬局がある。
一般開業医 GP=General Practitioner
内科、外科、小児科、耳鼻科、産婦人科、皮膚科など広い範囲の診察を担当している。専門的治療が必要な場合は、紹介状をつけて専門医や病院(公立または私立)へ紹介する。またX線検査、超音波検査、尿検査、血液検査などの特殊な検査が必要な場合には、患者を検査機関に紹介したり、検体を検査機関へ送り、検査を依頼する。診療時間は医師によって異なるが、ほとんどが予約制になっている。また時間外の往診も行う。
ふつうの家庭は、結婚時に家庭医を選び、その後その地域に住む間はずっと同じ医師の診療を受ける。高齢になってACATによる査定を受ける際にも家庭医が関与する。
専門医 Specialists
それぞれの分野に専門医がおり、原則として一般開業医から紹介を受けた患者を治療する。一般開業医にはそれぞれ懇意の専門医がある。
一般開業医から紹介を受けずに、直接専門医を訪問して治療を受ける場合は、国民健康保険の対象外になる。大半の専門医は予約が1~2週間先になることが多いので、緊急の場合には開業医から予約をとってもらうか、病院の救急部門に送られる。
病院 Hospital
公立と私立があり、それぞれ総合病院と専門病院がある。専門病院には、小児科、産婦人科、眼科、精神科、老人科などがある。大半の総合病院に24時間受け入れできる救急部門がある。また、地域の中心的な総合病院には「地域健康センターCommunity Health Service」が併設されており、在宅ケア、在宅看護、青少年の保健教育、成人の飲酒教育などを担当している。高齢者介護評価チームも総合病院にある。
薬局 Chemist
医薬分業システムなので、薬品の購入には医師の処方箋が必要になる。一般的なかぜ薬、鎮痛剤、解熱剤、せき止め、下痢止めなどは処方箋がなくても買えるが、抗生物質、血圧降下剤、消炎剤、強力な鎮痛剤などは医師の処方箋が必要になる。薬品代は国民健康保険の対象にならない。満61歳以上の人は、薬剤カード Pharmaceutical Card を申請しておけば、一定額を超える薬剤費は支払う必要がなくなる。
オーストラリアの高齢者介護制度
高齢者介護評価チーム Aged Care Assessment Teams(ACAT)
在宅の高齢者が病気や障害、衰弱を持った場合、どの程度の介護が必要かを評価査定する医療チーム。70歳以上の人口2万人に一つの割合で設置されている。メンバーは医師、看護師、ソーシャルワーカーが国から任命され、必要に応じてOTやPT、認知症の専門家なども加わる。活動予算は国から支給される。
高齢者の身体、機能、精神、生活環境、人間関係などのすべての状況を調査し、専門家の立場から中立に評価し、説明する。その上で、今後の生活を続けるためにどのような支援が必要か、どのような支援があるか、説明する。在宅ケアのパッケージ、あるいは施設ケアといった選択は高齢者や家族の権利として尊重されており、チームが強制することはない。しかし、施設に入るにはこの評価を受けることが義務付けられたので、安易な施設入居は削減されている。評価を受けるには、本人、家族、親族、家庭医、ソーシャルワーカー、友人などの申請や通報があればいい。評価は原則としては自宅で受ける。
評価後、家族、本人を交えて、今後のケアプランを作成する。
地域在宅ケア Community care
オーストラリアは1985年にホーム・アンド・コミュニティ・ケア制度HACCを導入したように、世界でも早い時期に施設ケアから在宅ケアにシフトした国である。高齢になり、病気や障害があっても、住みなれた家から離れずに生活できるように、地域が支援する制度ができている。提供されるサービスは、掃除、洗濯、アイロン掛け、買い物同行、シャワー、更衣、食事の準備、家屋のメンテナンス、配食サービス、買い物や図書館行きなどの移送サービス、訪問看護、介護者の一時休息のためのレスパイトケアなど。
自治体には、ホステルやナーシングホーム、リタイヤメント・ヴィレッジに隣接して、あるいは独立して、デイケアセンターがあり、昼間の余暇活動、社交の場になっている。ここへの移送サービスもある。
施設ケア Residential care
高齢者専門の施設に入居し、介護や看護を受けながら生活する制度。施設の種類は、ホステルとナーシングホームがある。かつては要介護度が低い方用のホステルと要介護度が高い方用のナーシングホームと区分されていたが、現在はこの区分はなくなり、名称だけが残っている。また、公的な施設とは別に民間の施設として、有料老人ホームにあたるリタイヤメント・ヴィレッジがある。
ホステル Hostel
かつては要介護度が低い方が主に入居していた集合老人ホーム。食事、洗濯、掃除などのサービスがあり、精神的には健康だが、自宅での生活がむずかしくなった高齢者が、入居金を払って入居してきた。いまも施設の設備により、レベル8から5のローケア高齢者が多く入居している。しかし政府はホステルとナーシングホームの垣根を取り払い、ホステルに入居してから、障害などが出ても、ナーシングホームへ移す必要がないように、ホステルにもナーシングホーム並みの介護と設備の充実を求めている。今後は、かつてホステルに入居していた程度のレベルの高齢者は、在宅ケアのサービスを受けて、できるだけ自宅で暮らすことになる。
今回視察を予定しているシドニーのレイ・プレイス・ホステルは、ユニット構成の先進的なモデル建築だが、開設から15年を経過しているため、入居者の高齢化が進み、ハイケアの機能をもった施設の増設を計画している。
ナーシングホーム Nursing home
レベル4から1のハイケア高齢者が入居している施設。24時間介護サービス付きの老人ホームで、日本の特別養護老人ホームにあたる。かつては入居金が不要だったが、1997年から入居金が必要になっている。そのかわり98年から、施設の設備の整備が必要になり、2007年には2人以上の部屋は全廃するように目標が定められている。
今回シドニーで視察を予定しているNew Horizons Aged Care Facilityはハイケアの新しい施設で、ナーシングホームの名をつけていない。
リタイヤメント・ヴィレッジ Retirement Village
55歳以上で、フルタイムの仕事をやめた人とその配偶者を対象とする民間の老人ホーム。ほとんどがコンパクト化した自宅になっていて、2戸のテラスハウス形式や、数十戸の長屋形式、2階か3階建てのアパート形式をとっている。必要な人には医療や介護サービス、リハビリ施設、運動施設があるほか、水泳プールやホビールーム、図書室などの余暇施設も充実している。居住権を買う形 Resident Funded がほとんどで、まれに寄付金で運用する形 Donor Funded がある。掃除、食事、光熱、水道、メンテナンスなどのサービス料を毎月支払う。
大きく分けると、インディペンダント・リビング・ユニット IndependentLiving Unit とアシステッド・リビング・ユニット Assisted Living Unit の2つのタイプがある。自立している人用のインディペンダント・リビング・ユニットは食事、洗濯、掃除などのサービスが基本で、必要な場合には有料で介護サービスも受けられる。アシステッド・リビング・ユニット(ディペンダンシイ・レジデンシャル・ケア Dependancy Residential Care などとも呼ぶ)は、介護サービスもつく形で、さらにロー・ケア施設とハイ・ケア施設に分かれている。






