旅行体験レポート ~旅から学んだこと~
フィンランドの保育園
フィンランドの保育園を視察して
実施:2005年8月 スウェーデン・フィンランド
教育福祉視察旅行(淡島幼稚園英語教諭上道由紀子様)

Kytoniityn paivakoti保育園
私たちが訪れたKytoniityn paivakoti保育園は、ヘルシンキから車で30分ほどのところにある、森に隣接した住宅街の中にありました。その静かで自然に恵まれた住宅街は、日本で例えるなら軽井沢といった感じで、さほど広くない範囲内に保育園がいくつも点在していて、車で目的地へ向かう途中にも2,3保育園を目にしました。
フィンランドは日本同様、戸内では靴をぬぐそうで、この保育園でも玄関で靴をぬいであがりました。私たちはまず、ひとつひとつクラスを見学しながら各クラスの先生に説明をしていただき、最後に主任の先生から全体のお話をうかがいました。が、ここでは、外観から始め、園全体について書いてから、各クラスの様子を記していきたいと思います。
1、外観
フィンランドは日本同様、戸内では靴をぬぐそうで、この保育園でも玄関で靴をぬいであがりました。私たちはまず、ひとつひとつクラスを見学しながら各クラスの先生に説明をしていただき、最後に主任の先生から全体のお話をうかがいました。が、ここでは、外観から始め、園全体について書いてから、各クラスの様子を記していきたいと思います。
前庭には、小さな子向けの砂場やブランコなどの遊具がありました。建物の横には、大きな岩山が、裏庭には、大きな子向けの鉄棒やジャングルジム、滑り台などがありました。そして、裏庭の柵の向こうに、森が広がっていて、木が鬱蒼と生い茂っています。
2、園全体の様子
朝8時15分に開園し、9時半までは朝ご飯を食べたり、お部屋の中で過ごします。その後11時半までは、外遊び。戻ってお昼ご飯を食べ、2時のおやつの時間まではお昼寝の時間です。大きな子たちはお昼寝をしないので、各自自由に遊ぶのでしょう。お母さんのお迎えはだいたい3時から4時で、5時半に園は閉まるそうです。
園には60人ほどの子供たちがいて、小さい子には3,4人にひとり、大きい子には7,8人にひとりの割合で先生がついています。クラスは年齢別で4つに分けられていました。それぞれのクラスに食事のための部屋、身支度をする部屋、遊びのための部屋、の3つの空間が与えられていました。といってもドアによる仕切りはないので、どこでも自由に行き来できます。
まず、食事のための部屋ですが、そこには7,8人がつけるテーブルと椅子が置かれていて、家の食卓と同じような雰囲気がありました。かわいらしいカーテンのかかった窓からは光が射し込んでいて、楽しい団らんの様子が容易に目に浮かびます。身支度をする部屋は、使用する年齢に応じて備えられているものが多少異なりますが、トイレ、洗面所、足を洗えるような洗い場、ロッカーがありました。洗面所の壁にはタオルかけが並んでいて、各自の色とりどりのタオルがかけられていました。大きい子のクラスには、その上に名前が貼られていますが、小さい子のクラスには、それぞれがわかるようなマークが付けられています。遊びのための部屋は広く、走り回れるくらいの空間と、おままごとなどができるようにおもちゃのキッチンやテーブルが置いてある空間と、本を静かに読めるようソファやラグが置いてある空間がありました。
3、保育について

保育園内の様子
この園で最も大切にしているのは、“自立心”“自分で自分が元気だと思えること”“園での生活が楽しかったと思えること”だそうです。園では生活の基本を教えてもらえますが、基本的には自由に遊べるところです。「一緒に何々をしましょう」、ということはあっても、「次は、みんなで何々をします」ということはなく、自ら希望を出して何をするかを決めて行動します。ですから、先生方も子供たちの意志を尊重して、いつも何をしたいかたずねるそうです。ひとつのクラスを複数の先生が担当するので、年度が変わるときには、少なくともひとりは持ち上がって、引き続き同じ子供たちを見ていくということでした。
遊びについてですが、子供たちは、自分たちのお部屋以外に、もちろん外でも遊びます。外遊びの時は、それぞれが家で用意している外遊び用の洋服に着替えて出ます。雨の時、雪の時は、それなりの装備をして出かけるそうです。天気や季節を理由に外に出ないのではなく、むしろ天気や季節を楽しむために積極的に外で遊ぶのでしょう。そのための着替えや、戻ってから体を綺麗にすることなどを厭う様子は全くありません。裏庭の奥にある森へも、週に1度は遊びに行くそうです。一度に大人数を連れていくことはできないので、これも希望を取って、7,8人のグループで遊びに出かけるそうです。
また、室内には、体育館を小さくしたようなプレイルームがあって、そこには、肋木(ろくぼく)も備えられていました。肋木が日本の体育館固有のものだと思いこんでいた私たちは、フィンランドでこれを目にしたときにきかなり驚き、ルーツはどこなのだろう、といった話で盛り上がりました。この園には、体育教育の専門家が数人いるそうで、ここでも週に1度は遊ぶそうです。
子供たちは、それぞれ個人のファイルを持っていて、園で管理しています。それには個々の様子や理解度などが記録されていきます。そして、そのファイルは、小学校、中学校へと持ち越されていくそうです。つまり、どの段階の先生も、そのファイルを見れば、その子供がどのように過ごしてきたかがわかるよう、国内でシステムが統一されているのだということがわかりました。
視察の間に男の先生をひとりも見なかったので、男性職員の割合についてたずねたところ、フィンランドでもその割合は少ないという答えが返ってきました。自治体から保育士に支払われる給料は、労働に見合うほど多くはないそうです。共働き家庭が多いとはいえ、保育士が家を支える男性の選ぶ職業とはなりにくいのは、この国でも同じようです。
4、各クラスの様子
1)0〜1、2歳
玄関のすぐそばにこのクラスがありました。12人の子供たちを3人の保育士で見ているそうです。部屋は白い壁に囲まれ、シンプルでとても片付いていました。壁も、カバの親子のキルティングのタペストリーがかけられている以外に飾りはほとんどなく、さっぱりとしています。そうかといって殺風景ではなく、置かれている緑色のソファや大きなチェア、木でできたおままごとのセットなどが引き立ち、家の中にいるような温かみを覚えます。ベッドはありませんでした。お昼寝は床にマットを敷いてするそうです。部屋の隅には小さなマットが積まれていました。白いタイルの貼られた洗面所は、観葉植物が飾られていたりして、さながらおしゃれなカフェのお手洗いのようです。
私たちが見学したとき、子供たちは部屋の中央にいる先生のところにかたまって立っていました。普段はばらばらに広がって遊んでいるそうですが、突然の見慣れぬ訪問客に驚いたらしく、横目でこちらをうかがいながら寄り添っている姿は、とてもかわいらしかったです。
2)2〜4歳
ちょうど本の読み聞かせを始めるところで、6,7人の子供たちがソファにお行儀良く座って先生に注目していました。本を読むときは、年齢で分けているそうです。私たちと先生が話している間、一言もしゃべらず、静かに本を待っていた子供達が気の毒になり、早々に退室しました。この年齢でも、全員が状況を判断してきちんとしていられることが、私には驚きでした。
3)4、5歳
4、5歳になると聞き分けが悪くなってくるので、2人ずつぐらいのグループに分けて遊ばせるそうです。各グループにやりたいことを申告させ、重なっている場合は話し合いで順番を決めるということです。
この年齢は就学前学校の準備期に入るので、はっきりした勉強のテーマも与えられていました。色の判断・数字・母国語のABCのphonics(アルファベットのそれぞれの音)が達成課題で、読み書きのプログラムもあるそうです。テストをするわけではなく、どのくらいわかっているのかを時々先生がチェックして、必要であれば補講もするそうです。その資料はファイルに入れられ、健診の時に両親にも見せるということでした。
子供たちはといえば、ある2人組は、テーブルに座って鉛筆で文字を書いていました。自分と家族について互いにインタビューし合い、それを書き留めているのだそうです。また、あるグループは、子供部屋のように作られた部屋の中で、パソコンに向かいゲームをしていました。ゲームはやはり大変人気があり、数学や映画のプログラムを楽しんでいるということです。制限時間は、ひとり1日15分から20分。
4)5、6歳<就学前学校>
小学校に入る前の教育がなされる年齢です。遊びを通して学び、小学校からの学習に備えます。1日4時間分は、デイケアとして無償ですが、それ以外の分については、収入に応じて自治体に支払いを求められるそうです。どの家庭がどれだけ支払っているかについて、先生方に知らされることはありません。
ここでは、20人の子供たちを2人の先生と1人の保育士が見ていました。棚には、学習教材と思われるおもちゃの箱がたくさん納められています。こういったものは、部品が細かかったり使い方も複雑になってくるので、最初は先生が一緒に遊んで正しい使い方を示すようです。教材は基本的に先生が管理しているようですが、慣れてくれば自分たちで出したりお片付けたりするそうです。
奥の部屋で粘土遊びをしていた2人組の男の子のうち、ひとりは日本人でした。“こんにちは”と、はにかみながら声をかけてくれました。お魚の絵を描いている子たちは、数日前に行った水族館の思い出を紙の上に表現しているところでした。ちなみに、乗り物に乗って遠出するのは、年に7,8回だそうです。
この子供たちも、片付けて着替えをするよう促されていました。外遊びの時間です。 外に出てみると、建物の横にある岩山に登って遊んでいる子供たちがいました。想像されるとおり、この山は大変人気があるそうですが、岩肌はつるつるしていて危険をともなうので、遊ぶ際にはいくつかの約束事が決められていました。年齢制限があって、小さい子はまだ遊ばせてもらえません。人数制限もあり、一度にたくさんは上がれません。また、両手を空にしていないと上ってはいけないそうです。
5、まとめ
保育中にもかかわらず、先生方は、ご丁寧にいろいろとお話し下さいました。おかげで、短い時間でしたが、たくさんのことを見聞きすることができました。
最も印象に残ったことは、建物の中も周辺も、さっぱりとしていて片付いているということです。もちろんサイズや安全性に関しては十分配慮されているのですが、インテリアなどは“子供”を意識しすぎておらず、むしろ、大人にも大変心地よい、くつろげる空間でした。それは、先生方の労働意欲も増進させるでしょうし、子供たちへの働きかけにも影響してくるのではないかと感じました。“危ないから、汚いからやらせない”、のではなく、“汚れてしまうけど、危ないけど、遊びたいならどうしたらいいか考えましょう”、といった積極的な姿勢がとれるのも、先生方に余裕があればこそなのではないでしょうか。
そして、考えさせられたのが、“自由”と“学習目標”との折り合いについてです。基本的に一日中自由に過ごしているはずなのに、きちんと学ぶべきこともこなしているというのは、一体どういうことなのでしょうか。どうやら、学習的な内容のものでさえ、強制されなくても自分たちで選んでやっていくようなのです。子供たちには、遊びたい、体を動かしたい、という欲求に並んで、知りたい、学びたいという気持ちも十分備わっており、環境を整えてあげれば、自らバランス良く選んでいくことができるのかもしれません。そのあたりにも、学力1位の秘密が隠されているのではないかと感じました。
次に視察の機会があったら、是非こういった点も踏み込んで見てきたいと思います。






