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北欧

デンマークの高齢者ケア

2011年1月25日更新

高齢者ケアの基本3原則

  1. 継続性の尊重
  2. 自己決定権の尊重
  3. 残存能力の活用

高齢者センター/Aldercentre

人口7000人に1か所程度の割合で設置されている高齢者のための多機能集合施設。デイサービスセンター、カフェテリア、リハビリ室、売店、足のケア、ヘルパーの詰め所、訪問看護師の詰め所、配食サービスの拠点などの在宅ケア支援の機能に加えて、病気や加齢、障害などの理由で、在宅で24時間訪問介護・看護のサービスを受けても自立した生活ができなくなった高齢者が入る介護・看護付き集合住宅、認知症専門の集合住宅も併設している。自治体やNPO法人が建造し、運営している。居宅は、独立したアパートになっていて、1寝室+1居間(簡易キッチン付き)+シャワー・トイレが普通。また、センターの周囲に元気高齢者のためのバリアフリー高齢者住宅を設置する形も一般的。

高齢者に関わる機能のほとんどが一つのセンターに揃っていると、高齢者はここだけで生活できてしまうので、社会との接触が欠けてしまう恐れがある。このため、カフェテリアやアクティビティセンターを地域住民に開放するなどして、外部の人々との交流を図る施設もある。

プライェイェム/Plejehjem

介護付き集合住宅で、60年代あたりから1987年まで建造された。当時の居宅の基準面積は17平方メートルで、トイレ・シャワー付きが望ましいとされた。1988年から建設が禁止され、その後の住宅法でトイレは7平方メートル以上で2人が支援に入れる広さが必要などと規定されたため、プライェイェムの居宅の面積は35平方メートル前後かそれ以上に広げられ、居宅にキッチンをつけるなどの改修がされた。自立できる高齢者部門と、介護が必要な高齢者部門の2つの構成になっている施設が多い。

介護付高齢者集合住宅/Plejecenteret

新しい形の介護付集合住宅。老人ホームではあるが、居宅面積が35平方メートル前後かそれ以上あり、居間、寝室、車椅子が回転でき2人が支援に入れる広さのトイレ・シャワー、キッチン、暖房がついている。また、共同スペースが十分にとられており、本屋雑誌が読める居間、家族が泊まれる寝室、趣味活動室、リハビリ室、リフト付浴室、リハビリ室、利用者用のパソコン室、外部の高齢者も利用できる大きな食堂などの他に、各ユニットに10人程度が食事が取れる食堂もある。利用できる人は、在宅で24時間訪問介護・看護のサービスを受けても自立した生活ができなくなった老人たち。

補助器具センター

全国に14の大きな補助器具センターがあり、各コムーネに小規模の補助器具センター兼倉庫兼作業所がある。必要になった人はヘルパーや理学療法士などを通じてコムーネの器具センター訪問のアポイントをとり、センター職員の立ち会いのもとで自分の要求に合う器具をさがす。センター職員は使用する住宅や施設を訪問し、選んだ器具がフィットするか調査し、細部はその人の体形や障害に合わせて修正したり、住宅改造の計画などをたてる。この器具修正や住宅改造制度がデンマークの補助器具貸与制度の優れている点。器具はすべて無料で貸してくれる。電動車椅子、リフト、電動キッチンなどの大きな器具は、14の大きな補助器具センターに多く、コムーネの器具センターは杖などの小物が多い。視察は断られるケースが圧倒的に多い。

在宅ケア

可能な限り在宅での暮らしを希望する老人が多く、国や地方自治体はこの希望にそうように努力している。在宅ケアはホームヘルパーや訪問看護師、作業療法士などによって行われる。ホームヘルパーは排泄介助、シャワー介助、食事の準備、薬を飲ませる、あと片付け、掃除(2週間に50分)、洗濯、買い物などを行う。訪問看護師は注射、服薬管理、カテーテル交換、皮膚病や怪我の手当、栄養指導、補助器具申請、ホームヘルプ査定などを行う。

24時間訪問介護・看護

可能な限り在宅での暮らしを支えるのに欠かせないのが24時間支援体制。昼間のサービスは買物、掃除、食事の準備や皿洗いなどの家事援助が多く、ヘルパーが中心になる。夜間サービスは身体援助が多くなるので、看護師が主体になる。

統合ケア

1990年代からデンマークの多くの自治体で、在宅ケアと施設ケアを混合し、高齢者センターなどの施設で働くヘルパーが、センター外の自宅に住む高齢者も訪問して介護するようになった。この流れは、高齢者の住まいが、施設から介護付高齢者集合住宅へと、変わっても、続いている。

社会福祉保健ヘルパー(SSH)Social-og Sundhedshjælper

就学前学校で1年、基礎学校(9~10年間)で9年の教育のあと、20週間の実習を含む基礎教育を受けて合格する必要がある。基礎学校で10年生の教育を受けた人は基礎教育を受けることなく、ヘルパー専門教育を受けることができる。専門教育は56週(14か月)で、そのうち32週は実習になる。1回目は内外科、2回目は精神科、3回目は在宅での実習。

社会福祉保健アシスタント(SSD)Social-og Sundhedsassisitent

社会福祉保健ヘルパーの資格を得たのち、さらに1年8か月の専門教育を受けると得られる資格。学校での医療的内容も含む介護と看護の授業が32週、病院や在宅での実習が48週。終了後は在宅ケアや介護付集合住宅の介護リーダー、リハビリセンターや病院のアシスタントとして活躍している。

この資格を取得後、さらに看護師、作業療法士、理学療法士などの上級資格に必要な教育を受けることもでき、その場合にはアシスタントの資格があると教育年数が減少され、3年間で資格が取れる。

ぺダゴー/Pedagogisk Grund Uddannelse

高齢者や障害者のデイセンターの指導員、保育園や学童保育の保育士、青少年クラブの指導員、精神障害者センターの指導員などになる資格。1年の就学前学校、9年か10年の基礎学校、3年の高校を卒業したあと、3年6か月の保育士養成学校で学ぶ。うち1年6か月が実習。

看護師、作業療法士、理学療法士

1年の就学前学校、9年か10年の基礎学校、3年の高校を卒業したあと、3年9か月の看護専門学校で教育を受け、卒業試験をパスすると看護師になれる。作業療法士、理学療法士も同様の年数の教育が必要。社会福祉保健アシスタントの資格がある人は、3年でこれらの上級資格が取れる。

リハビリセンター/Rehabilitationscenter

ここ10年ほどの間に各自治体で積極的に開設されている施設。介護予防、残存能力維持、病院から退院後に自宅で暮らせるような機能訓練、介護労働者などの腰痛解消、喫煙で肺を痛めた人のリハビリなど行っている。理学療法士と作業療法士を中心にして10から20人のスタッフがおり、リハビリ用アパートも運営しているところもある。以前は病院で行っていたリハビリはいまはここに移行し、医療費の削減を図っている。主な対象者は骨折後の人、脳血栓の人、関節リューマチ患者、整形外科で手術後の人ですべて12歳以上。12歳以下は障害児保育園か開業理学療法士が担当する。

退院する前に病院から連絡があり家庭医、自治体の24時間介護サービスに情報が流れる。ここの利用には必要性の認定が必要で、その後、自宅かここで検査を受け、その人に必要なプログラムが作られる。

デンマークの医療施設

デンマークには王立病院(実態はレギオンが運営)が1ヵ所、レギオン経営の病院が50前後、他に私立病院がわずかにある。ここ20年ほどの間に3分の2程度に減少し、平均入院期間も5.8日から5.0日に大幅に減少している。しかし、患者数は8%ほど増え、治療待機期間も増えた。2007年から待機期間が1か月を超える場合は、国の内外の他の病院で受診することを認め、その費用は国が負担することになった。病院は救急を除き、家庭医あるいは専門医の紹介がなければ診察しない。

家庭医制度

デンマークでは各家庭に担当の家庭医がいる。発病すると家庭医が診察し、治療しきれない場合は専門の病院へ紹介する。老人ホームの老人たちもそれぞれの家庭医をもっており、必要があれば家庭医は老人用集合住宅へも往診にくる。家庭医は公務員ではなく、自営業者に当たる。家庭医の数は政府によって決められ、地域にいる家庭医リストから自身の家庭医を事前に決める。

医療保険は2種あり、人口の96%が家庭医に登録する1種、残りの4%が家庭医も含めて専門医を自由に選べる2種に入っている。1種の財源は税金で、医療費全額無料・医薬品費1部負担、2種では医療費の公的な補助はほとんどなく民間医療保険でカバーする。

<高齢者を取り巻く環境の変化>

かつての家族は多子で3世代同居し、子どもの世話は家族だった。現在は少子または再婚による多子家族になり、全女性(子どもも含む)の72%が働いているので、子どもの世話は社会や施設の役割になった。現在の平均初産年齢は28歳から30歳の間で、子どもの数は1~2人というのが平均。

同様に老人のケアも昔は家族の役割だった。現在は核家族になり、同居家族は全体の5%以下にすぎない。老人は孤立し、社会がケアする形になった。都市化により、若者は都会に出、村には老人だけが残り、老人の生活を支えていた個人商店などもなくなり、地域社会のネットワークがなくなった。例として現在、あるコムーンには5つの老人ホームがある。うち4つは古い形のプライエム(ナーシングホーム)、1つは新しい形の老人センター。現在の老人の多くは、かつて肉体労働をしていた人で、その健康状態はよくない。特に、喫煙者、飲酒者、油ものを多くとる人の健康が悪化している。

いまの老人の多くは国民年金(40年以上住むと基礎額毎年45,000kr、住宅手当て毎月2,200kr)しか収入がない人が多い。現在の就労者は国民年金のほかに、職場での積立年金を支給される。これは公務員は義務化されており、民間企業も採り入れてきた。さらに個人年金をかけている人には税金が控除される。そのほかに各種の貯蓄方法ができている。こうしたことから、国民年金だけ支給される老人と積立年金や個人年金が支給される老人の間に貧富の差が生まれてきている。

以前の老人はすべてサービスを「ありがたい」と受けた。権力を認め、行政の意見に素直だった。1968年の学生運動・女性開放運動世代の老人になると、反権力的になり、多くの要求をだすことだろう。現在、コムーンの老人活動は各種あり、コムーンも補助金を出している。しかし、これからの老人はそれだけでは満足せず、自分のいまの趣味を老後も守ろうとするだろう。いいアイディアも提供してくれるだろう。デンマークでは、第二次世界大戦勃発の原因が、貧富の差が大きかったから、という反省があり、戦後平等意識が芽生え、福祉社会をつくろうという動きが出て、いまの社会になった。

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